斜灰れん石 clinozoisite 
Ca2Al3O(SiO4)(Si2O7)(OH)
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緑れん石のFeに乏しいものに相当する。Feを含まないものは灰れん石の低温相に相当する。

単斜晶系 二軸性(+)2Vz=20〜90° α=1.67〜1.70程度 β=1.67〜1.71程度 γ=1.68〜1.72程度 γ-α=0.01〜0.03程度 Feが多くなると屈折率・干渉色は高まる。なお,Feに乏しいものは干渉色が低く,時に褐色や藍色の異常干渉色が見られる。

色・多色性:
Feに乏しいものは無色で多色性なし。Feにやや富んでくると緑れん石になり,黄〜淡黄色の多色性がある。

双晶:
(1 0 0)にまれ。消光状態で認められる。

形態:b軸方向に伸びた柱状の自形〜半自形。不定形粒状集合体のこともある。斜長石の変質物としてはその中の塵状の微細な包有物となる。

へき開:伸び方向(b軸)に1方向に完全なへき開が見られる。
消光角:結晶の伸び方向(b軸方向に伸びている),および,それに平行なへき開線に対しては直消光する。なお,b軸方向から見たへき開線に対しては数°程度斜消光し,Feに富んで緑れん石になるとそれが20°程度に大きくなる(灰れん石は直消光)。
※ただし,結晶片岩の薄片は通常,線構造に対し平行に作製されるので,b軸方向に伸びる灰れん石や斜灰れん石のb軸方向から見える粒子はその薄片ではあまり見つからない。
伸長:b軸方向に伸び,かつb=Yなので,正の場合も負の場合もある。


累帯構造:
Al⇔Fe3+の置換による累帯構造があるものは平行ニコルでの色やクロスニコルでの干渉色の違いで確認できる。

産状

Feに乏しいものは灰れん石の低温相に該当し,蛇紋岩中のロジン岩の主要構成鉱物のほか,変はんれい岩の斜長石の変質物などとして,ぶどう石などと共生してひんぱんに産する。なお,Fe3+に富む斜灰れん石〜緑れん石は低温〜中温の幅広い変成相で安定で,緑色片岩・青色片岩・角閃石片岩などに広く見られ,時にエクロジャイト中にも産する。


角閃石片岩中の斜灰れん石 
Czo:斜灰れん石,Hb:普通角閃石,Pg:ソーダ雲母
斜灰れん石は平行ニコルでは灰れん石と区別困難。クロスニコルでは灰れん石同様,結晶の伸び方向に対し直消光するが,角閃石片岩中の斜灰れん石はややAl→Fe3+の置換があるため灰れん石よりも少し干渉色が高く,このように1次の黄色などに見える場合が多い。画像のものは結晶中心部がややFeを含み干渉色が1次の黄色で,結晶周辺部がFeに乏しく干渉色が1次の白(異常干渉色で藍色を帯びる)の累帯構造を示すものである。このように平行ニコルの色ではわからない程度の組成の違いがクロスニコルの干渉色でわかる場合もある。


肉眼で見た角閃石片岩中の斜灰れん石
淡褐色の微細な粒〜不明瞭な細柱状で,黒い普通角閃石と密に混ざった状態のもの。一方,灰れん石はFeをほとんど含まずこのように褐色を帯びることはほとんど無い。